そんな恵比寿 賃貸をイマドキの大人女性の皆様に
余計に問題は深刻かもしれない。
気づいた時には企業として完全に植物化していたということにもなりかねない。
それでは手遅れである。
今後、M造船の存在理由をどこに求めていくか。
その答えが社内各層の意見を取り入れてまとめた企業理念である。
「伝統に培われた多彩な技術と感性ゆたかな総合力で地球を舞台に社会に役立つ価値を創造します」とうたう。
これを補足する形でまとめた4項目の「経営姿勢」に「一人ひとりの個性と気概を尊重します」という一項目が入っている。
また「行動指針」には「プロとして仕事を楽しもう」というのがある。
「能力給」制度は本来、鼻面にぶら下げる人参であってはならない。
尻叩きの道具にしたら、たこ部屋経営である。
サラリーマンは金だけで働くわけではない。
自己実現や社会参加なども求めている。
かといって、霞を食っているのではないから、やりがいだけでは生きて行けない。
造船業一筋の時代なら、こんな面倒なことを言う必要はないだろう。
「効率」と「根性」で済んだだろう。
同社に社是社訓のたぐいが一切なかったのはうなずける。
造船業にひたすら励めば、企業は拡大し、それは同時に国への貢献であり、従業員も潤えた。
多くの企業も似たり寄ったりだった。
ところが今や同社の事業部は16に増え、本社が中央から「頑張れ」と号令していただけでは動かない。
個々の事業の戦略、戦術は第一線の「プロ」が自律的に担っていく風土、体制を作って行かなければ発展はない。
本来、重厚長大産業である同社も、ここまで変わっているのだ。
いや変わらざるを得なかったのである。
新人事制度は、このような事情から生まれた。
30代の課長補佐、主任クラスの中堅層に焦点をあてたのは、まさにこの層が動いてくれないことには、存在感のある企業として再生できないからだ。
働いたら、それにふさわしいリターンが結果として保証されなければ、やりがいも失せる。
フィードバックが金銭的にもきちんとなければ、生活を賭けているサラリーマンは動かない。
そのための分配の仕掛けが、「能力給」である。
ではM造船の新人事制度の運用実態はどうだろうか。
まだ2年にならないが、見えてきたのは、部門によって運用に違いがあり、年功的な考え方が根強い職場では、思わぬ問題が出ている。
年功序列意識の強い上長は、いくら実績があっても若すぎる人をどんどん昇格させることには慎重である。
このため、サジ加減して、そうした若手の考課点を実績より低く抑える。
その分を先に昇格させたいベテランの方に余分に盛る。
新人事制度では、ボーナス考課と調整加点を合計した年度考課点が昇格に直結するため、抑える場合にはボーナス考課から低い点をつけざるを得ない。
有能な若手は業績を上げているのにボーナスまで抑制される結果になるわけだ。
旧制度ならば、ボーナス考課と年度考課は別扱いだったので、まだ昇格させるつもりのない若手にも、ボーナス考課をよくすることができた。
つまりボーナスで報いて、昇格を待たせるという手を使えた。
まだ新制度の定着を図る段階なので、同社の人事担当者は当面、「人事制度の狙いをもっとよく浸透させて、上長の意識を変えていきたい」と考えている。
もう一つ問題なのは、課長補佐の中に、決められた職務手当では補えないほど多く残業をしている者がいるという現実である。
どうしても自分の裁量だけでは仕事の段取りを決められない職種があるわけだ。
杓子定規に現行の職務手当だけで対応すると、制度そのものがサービス残業を狙ったものということになってしまう。
同社では、これについては救済措置を講じる意向である。
どのような人事制度も、作りっ放しでは駄目だ。
メンテナンスが要る。
M造船では労使でフォローアップのために協議している。
納得性をどう得るか。
分配の方式を大幅に変えれば、損をする人と得をする人が出る。
能力、実績に評価軸を移せば、差は必然的に開く。
それだけに「公正」を意識して実現する努力が欠かせない。
「今度から、役員には部長クラスと面接して、直接、人事考課の結果を話してもらおうと思っています。しかしみんな、逃げ腰でね。そりゃあ、そうなんですよ。自分と同期の部長もいるわけですからね。『君はBだ』とか『Eだ』と言うのは、いやでしょう」。
ある上場企業の人事部長の話しである。
しかし人事考課の公開、本人への通知は、もはや避けては通れない。
面談して努力目標を指示「40から50歳くらいまでの課長から部長代行までの、部長を一部含む中間層は賛否両論です。『部下に悪いことは言いにくい』というのや『今さら、言われてもしょうがない」というのがありますよ。50歳を超えると、またいいんです。部長、部門長クラスがね」。
同社は91年度から考課制度を抜本的に改め、本人に通知することにした。
従来は必要のなかった「嫌な仕事」が出てきた。
しかし「悪平等」といわれていたこれまでだって、考課をやり、処遇に差をつけてきたのである。
徐々に波風を立てずに、しかしはっきりと選別してきた。
これ以上、昇格させるつもりもなければ、厚く昇給させる気もない部下にも、何となく期待を抱かせる。
考えてみれば陰湿である。
賃上げ原資が細り、ポストも限られて、これ以上だまし続けられなくなった。
賃金に差をつけ、管理職の賃金はアップダウンもありとなれば、考課の結果を公開して本人にフィードバックするのは、当然だろう。
暗闇でばっさりとやるのは公正ではない。
「人事考課のフィードバックは、年代層によって受け止め方は違いますね。40歳以下の若い方には好評です。
『自分がどういう評価を受けているか、きちんとわかるので、いい制度だ』と言ってくれますね」と語るのは、I商事のS取締役人事部長である。
「能力(執務態度)考課」の評定期間は前年10月末までの一年間である。
結果は昇給、昇格の決定に利用するから、重大な意味を持つ。
ボーナスの決定には別に行う「業績考課」を使う。
これは一年間の個人別の目標達成度で評価する。
毎年3月に、役員前の参与以下、入社間もない層を除いて、全員に「能力(執務態度)考課ランク通知書」を配布する。
「平成5年度の能力(執務態度)考課ランクは次の通り決定しましたので通知いたします」と書き、ランクが明記されている。
AA(等級のレベルをはるかに上回る抜群の能力レベル)から、CC(等級レベルに遠く及ばず等級のレベルの到達はきわめて困難)まで、7つのランクのいずれかが、これでわかる。
通知書を渡す時に上司は、本人と面談して考課結果の説明をし、今後どういう面で努力すべきか指示することになっている。
しかし実際に面接を受けているのは70%ほどだそうだ。
照れくさくて、通知書を手渡すだけの人もいるらしい.93年6月に取締役に就任したS人事部長は、3月には参与として松村専務から通知書を受け取った。
「別に話はしませんでしたけどね」と苦笑する。
このクラスは、そのためにわざわざ膝詰めで話をするまでもないのだろう。
さらにIでは、能力開発や配置転換の判断材料を得るため、「自己申告」を制度化して毎年一回3月に行っている。
AとBの2種類あって、Aは現在の仕事が自分に適しているかどうかを聞いている。
面白いのはBで、人事部長あてに直送してもらう。
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